株式会社 ティーズコンサルティング
代表取締役社長
吉岡 励努 様
2014年4月
株式会社サンウェル* 入社
(*ティーズコンサルティング親会社)
2019年1月
SunWell Vietnam Co. Ltd.
代表取締役社長 就任
2021年8月
SunWell America Inc. 取締役 就任
2021年11月
株式会社ティーズコンサルティング
代表取締役社長 就任
カイシャの育成論について
————最初に、人材育成のお取り組みや考え方について教えてください。
弊社の人材育成の考えは、「自律的なキャリア形成を支援する」をということに尽きます。
会社が社員のキャリアというハンドルを握るのではなく、社員一人ひとりが自分の人生と向き合い、自身のキャリアのハンドルを握り、目的地(キャリアゴール)を決めて進んで欲しいと考えています。
今は転職が当たり前の時代ですので、会社は社員一人ひとりが目的地を見つける手助けをし、その目的地に向かって迷わずに進められるようアシストをする、言わばナビゲーションのような役割が求められていると思います。
ですので、自分自身でキャリアの方向性を決められるよう、その支援に力を入れています。
その上で我々の福利厚生を自分用にカスタマイズしながら、それぞれのキャリアアップを目指して欲しいと思っています。
キャリアアップに関する具体的な福利厚生は、まずはキャリア形成に関する勉強代を年間で1人当たり年間6万分、予算として与えています。
技術書籍代に使う方もいますし、資格取得代金、資格取得のためのスクーリング、英会話スクール等、自分の目指すキャリアに合わせて各々自由に使って貰っています。
また、Udemy動画講座受け放題や、キャリアに迷った際やプライベートな悩みを専門家と相談できるサービスなど、ユニークな制度もあります。
————自由に勉強代を使ってね、といっても中々消化されない場合もあると思うのですが、制度を適切に活かしてもらうためにどういった工夫をされていらっしゃいますか?
そうですね、弊社の場合はコーチング制度を導入していて、入社時にキャリアの専門家の方と1on1の面談をする機会を設けています。
セッションを通して、将来のキャリアプランを明確にし、ロードマップや今やるべき事を棚卸しして頂いていますので、それが自律的な学習意欲形成に繋がっているかとは思います。
当然会社としても社員がスキルアップしていくことは、ビジネスモデル上非常に大きなメリットになります。
ただ、先程も述べたように会社主導で「こういう方向に向かっていってください」と指示するのは、転職が当たり前である今の時代には合わないと思うので、本人がどうしたいのかを一番に尊重するというのが我々の考え方ですね。
また、7月から新しい評価制度も始まるので、自分自信のなりたい姿に年間でどの位で達成できたのか、ということもしっかり評価していきたいと考えています。
吉岡様のご経験や理念について
————そういった考え方に至った背景は何かございますでしょうか?
一昔前は、入社してから定年までずっと同じ会社で働くという終身雇用が当たり前で、会社主導で社員のキャリアを作っていくということが出来たと思うのですが、現在は一つの会社で定年まで勤め上げるということは非常に珍しくなってきました。
そんな時代だからこそ、自分自身でどんなキャリア形成をすべきかを常に考え、それに向かってスキルアップするという、自律的なキャリア形成が非常に重要になってきていると思います。
ちなみに私自身もこれまでのキャリアは何度か転職をしましたし、会社にキャリアを委ねるのではなく、自分自身で自分のキャリアを常に考え、切り開いてきたと思います。
ティーズコンサルティングと弊社の社員は、どちらかがどちらかに依存する関係を望んでおらず、お互いが対等な関係であると考えています。
ティーズコンサルティングも社員を必要としているし、社員もティーズコンサルティングを必要としている関係が理想で、お互いの方向性が一致しているので同じ道を歩み、もし将来的にどこかで方向性が合わなくなる場合は、ティーズコンサルティングを卒業していくものだと考えています。
少しドライに聞こえてしまうかもしれませんが、社員本人がどうなりたいのかを一番尊重し、その上で会社と同じ方向を向いていたら、ずっと一緒にやっていきたいというのが本音です。
会社は社員にずっといたいと思ってもらえるよう、常に努力と成長をしていかなければいけません。
会社の一方通行で社員に要求はなく、社員と一緒に、みんなで会社を作っていく、というのが理念です。
————方向性という言葉が出たのでお伺いしたいのですが、具体的に会社としてどういう方向を目指していらっしゃいますか?
弊社は2006年に創業をしており、それなりに長く事業を展開しているのですが、紆余曲折あり2021年10月にM&Aを経て、株主(親会社)が新しくなったという経緯がございます。
今は第二創業期という位置づけで、新しく生まれ変わり市場で生き残っていかないといけないというフェーズをようやく脱した、というのが現実的な立ち位置だと考えています。
ようやくここ半年で将来をしっかりと描ける拡大フェーズに入ったのですが、今後は社員のキャリア形成支援はもちろん、自社サービスを拡大させ、IT企業として次のステージに進みたいと考えています。
————M&Aを実施されたということで会社として大きな転換期にあったと思うのですが、吉岡様としてはどういった経歴から、エンジニアの会社の代表になられたのですか?
私は某人材会社の営業からキャリアをスタートし、その後外資系企業の人事としてエンジニア採用や人事制度、組織開発といった、主に人事周り中心のキャリアを歩んできました。
その後は株式会社サンウェル(ティーズコンサルティングの親会社)の経営企画部長として、海外法人の立ち上げや中期計画の策定、M&Aの主導をおこなってきました。
ティーズコンサルティングの代表に就任したのは約1年半前の2021年11月です。
————この1年半で、特に大変だったエピソードなどございますか?
振り返ると常に大変ではありますが...(笑)。
このM&Aを手掛けたのは自分自身ですが、それでも外から見る会社と中から見るのとでは、やはり見え方が全く違いましたので、まさに第二創業期としてゼロからのスタートといった感じでした。
元々メイン事業としていた上流の技術コンサルティング事業は、残念ながらこの1年半で大きく縮小してしまったのが一番の誤算でした。
私の社長としての経験の浅さが足かせとなり、お客様や社内外のステークホルダーのグリッドが後手に回ってしまったのが原因です。
そしてある程度覚悟はしていたものの、M&A後にティーズコンサルティングを去っていかれた方々もいらっしゃいました。
当初は既存の事業を伸ばしつつ、新規事業も展開していく計画だったので、そういう意味では非常に悔しい結果となってしまいました。
とはいえ、それを乗り越えられたのは、新規事業が順調に推移し、既存事業の落ち込みをカバーできたことが挙げられます。
特にエンジニアの採用が比較的上手くいった事が良かったと思います。
————採用に成功している要因はなんでしょうか?
一番は、会社の理念や採用コンセプトに共感していただけた方が多かったということだと思います。
内定承諾率も85%を超えていて、この業界、職種、売り手市場を考えると非常に高い数字だと感じています。
また採用する姿勢として、会社が候補者を選ぶのではなく、会社が候補者に選ばれる、という気持ちで臨んでいます。
ひとりひとりの面談の中で丁寧に会社の説明をして、本人の方向性と一致しているかどうかを、双方が見極めることが大切だと思います。
あとは余談ですが、メッセージ一つをとってもテンプレは使わないようにしています。
例えば、スカウトメールをテンプレで送らないというのはもちろんですし、その後の日程調整などのメッセージもひとりひとりに打っています。
そういった丁寧さも、間接的に承諾率の高さに繋がっているのかもしれないです。
————ありがとうございます。吉岡様が代表をされる中で、気を付けていることや重点を置かれていることはございますか?
売り上げや利益など、社員に対し経営情報をしっかり開示し、納得度や透明性を高くしていきたいと考えています。
また、なぜ会社がこの方向を目指しているのかということなど、数字だけではなくその背景の説明もすることにより、社員の疑問や迷いをできるだけ払拭することは心がけています。
経営層と従業員で、できるだけ見える領域に差をつけたくないと言いますか、同じ目線で一緒に会社を作っていくという意識でありたいと思っていますね。
社員の皆様について
————貴社のエンジニアさんの特徴や、ご活躍されている社員様の例などはございますでしょうか?
やはり理念に共感して入社してくれた方ばかりなので、会社に依存するのではなく、自分で成長していくためにティーズコンサルティングという会社を利用して、自分のキャリアを叶えたい、という方が多いと思います。
面接で将来のキャリアプランを聞くと、将来的には独立したいと宣言される方もいらっしゃいますし、上昇志向の強い方や技術者としてとにかく成長したいという方が多いのが特徴ですね。
また、優秀だな、成長するな、と思うエンジニアは、やはり良い意味で仕事を仕事だと思っていない方が多い気がします。
休日は何をしていますか?と聞いても、プログラミングが楽しいので個人で開発をしています、という方も結構いらっしゃるので、本当にエンジニアさんっぽいなと、良い意味で思いますね。
そういった職人気質の方はやはり成長も速いです。
会社側がこれをやれと提示するような、企業優位の姿勢だとどうしても企業が必要としている人材になるしかないですよね。
ともすれば都合の良い人材になりかねない。
そうではなくて、会社は成長するための土壌の用意と、育つためのマインド面を支援し、あとは本人の力で自分の咲かせたい花を開けばいい。
それが本当の人材育成だと考えています。
————エンジニアさんが多い会社ということで、何か工夫されているところなどございますか?
工夫していることとしては、エンジニアの仕事以外の仕事は積極的には求めない、ということですね。
コミュニケーション能力を上げて欲しいとか、リーダーになってマネジメントして欲しいといったことは、本人が望まない限りは会社も求めず、本当に好きなことだけをやってもらって、自分のスキルに向き合っていただくということを一番重視しています。
ではマネジメントの部分は誰が担うのか?という話になるのですが、そこはやはり会社としての今後の課題でもあります。
ただ、エンジニアの中でも、もちろんマネジメントする方向に進みたいという方も一定数いらっしゃるのでそういう方には是非そういったキャリアを提供していきますし、逆に人と接することが苦手で自分の技術にだけ向き合っていたい、という方には無理に押し付けないようにしています。
何度も言うように、まずは「エンジニアが何をしたいのか・どういったキャリアを歩みたいのか」という事からスタートし、そこに会社がどう支援していけるのか、それがどう会社と方向性を合わせていけるのか、というところを重視しています。
そういった方針なので、珍しいとは思うのですが退職支援も行っています。
何年か働いて成長できたけれど、もうティーズコンサルティングだとこれ以上の成長も見込まれないですということや、働く中で自分の方向性が変化してくることもあると思うので、その場合でもしっかりと最後まで支援することも必要だと考えています。
今、本当に転職するべきかどうかというところも含めて、転職に踏み込むのであればどういうやり方があるとか、こういう転職先がいいんじゃないか、といったところまで相談に乗って、納得して転職して頂きたいと思っています。
もちろん、優秀なエンジニアが抜けることは会社にとって大きなダメージですし、寂しい気持ちはあるのですが、そこは折り合いをつけて全力で背中を押します。
これは私自身、今まで何度か転職をしてきた経験もありますし、会社のために働くというよりも自分のために働くべきだと思っているからだと思いますね。
当然、定年まで一緒に働いて頂きたいというのが正直な本音ですが、別々の方向性になったのであればしっかり最後までサポートしていくということが本当の意味でのキャリアサポートだと思います。
逆に会社としては、最後までエンジニアに選ばれ続けるように、魅力的な会社であり続ける事が必要ですよね。
————吉岡様と、社員の皆様のお仕事のやりがいを教えてください。
私自身のやりがいは、やはりエンジニアはじめ社員の皆が楽しく働いてくれているということが一番嬉しいですね。
会社の制度を活用してスキルアップしていく姿をみると、経営者冥利に尽きる思いと言いますか。
あと経営者としては、本当にゼロからのスタートの会社なので、ひとつひとつステップを踏んで成長・安定・拡大していく過程を作っていける、ということはとても大変な事ではありますが、醍醐味でもあります。
これからまだまだ会社も成長し、柔軟に変化していかなければいけないというところも含めて、やりがいだったり仕事の面白みかなと思います。
社員の仕事のやりがいは、やはり自分の本当にやりたいことにフォーカスできる環境、ということが一番かと思います。
転職してくる方の中には、開発をしたかったけどやらせてもらえなかった、エンジニアとしてキャリアを積みたいのにマネジメントを求められて苦痛だった、という方も結構いらっしゃるんです。
そういう方にとっては、弊社で自分がやりたいことに集中できる、ということはやりがいに繋がっていると思いますね。
また参画する案件も原則エンジニア自身で選ぶことができます。
入社するときに、どんな開発環境が理想なのか、何を伸ばしたいのか、将来どうなりたいのか、といったことをしっかりヒアリングして、その上で我々が提示する複数の案件候補の中から選んでいただくというやり方をとっています。
————最後に、社員の皆様には、どういった成長をしてほしいとお考えですか?
ひとりひとり成長したい方向が違うのでどんな成長でもいいのですが、一貫して言えることは、現状に満足してスキルアップを怠ることはしないで欲しいなと思っています。
5年後10年後も通用し続けるスキルというものはないと思っていて、アップデートしていかないとずっと活躍し続けることは難しいと思うんです。
特にITエンジニアという仕事は、いつも最新技術をキャッチアップしていかないとすぐに置いていかれる世界なので、日々アップデートされる技術についていく必要がある、ということはとても大変な部分だと思いますね。
そこで現状に満足してしまうとどうしてもキャリアが見えなくなってしまうので、どんなスキルアップができるのかということは常に考えながら仕事して欲しいと思っています。
私自身もそれは意識していることです。
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